別居中は自分の家であっても住居侵入罪

別居中は自分の家であっても住居侵入罪になる可能性もSeparated house invasion

別居中に妻が居住する夫所有の家へ、夫が合鍵を使って勝手に入ると住居侵入になるのか?

自分名義の家であれば、別居している配偶者が生活している家に無断で立ち入っても問題ないと考える方も多いと思います。しかし、状況によっては犯罪行為になる可能性があるので注意が必要です。
全てのケースで犯罪となる訳ではないと思われますが、別居期間だけでなくさまざまな状況が考慮されて判断されますので無断で侵入するとリスクがあります。
別居中の自宅侵入が住居侵入財に当たるかに関する記事が、ファイナンシャルフィールドに掲載されていますたので紹介します。

別居中であろうと自分の住んでいた、しかも自己名義の家に、合鍵を使って自分の持ち物を取りに行くのは問題がないように思えます。
このようなケースで妻から住居侵入罪で訴えられた裁判がありました。結果はどうなったでしょうか。

事案の概要

妻が夫の浮気を疑い、夫婦仲が悪くなり、別居生活に入りました。
別居して離婚訴訟中の妻が居住する夫所有の家屋へ、別居から約3年後、夫が合鍵を使って夜間玄関から立ち入りました。
妻の浮気現場の写真を撮り、不貞を主張・立証するためです。これに、妻が腹を立て、夫を住居侵入罪で訴えました。
立ち入ったのが自分の家なので住居侵入罪は成立しないようにも思えますがどうなのでしょうか。

住居侵入罪が成立するには

住居侵入に関しては、刑法130条に、「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10円以下の罰金に処する。」と規定されています。
刑法のテキストによると、この法律が守ろうとしている利益には、住居権説と住居の平穏説の2つの考え方があるようです。

住居権説は、住んでいる人に住居に入る許可を与える権利があるという考え方、一方、住居の平穏説は、勝手に住居に侵入するのは、住居の平穏な状態を侵害する行為なので違法という考え方のようです。
いずれの考え方に立っても、別居中の妻の許可なく勝手に住居に入る行為は、たとえ自己名義(自己所有)の住居であったとしても、住居侵入罪が成立する可能性があります。

上記の判例でも夫に罰金の有罪判決が下されました。自分の家だからといって別居中の家に無断で立ち入るのは気をつけたほうが良さそうです。
妻が立ち入りに同意しない場合は弁護士などの法律の専門家にアドバイスを求めたほうが良いでしょう。

窃盗罪が成立しても刑が免除される場合がある

上記判例は、住居侵入罪に関するものでしたが、自分の持ち物を持ち出した場合は、窃盗罪(刑法235条)が成立するのでしょうか。

刑法242条には、「自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。」と規定されています。
この条文にあるように、自分の持ち物(所有物)であっても、他人(妻)が事実上支配(占有)している物を勝手に持ち出すと窃盗罪が成立します。

しかし、一方、刑法244条1項には「配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪(窃盗)、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。」との規定があります。
つまり、配偶者、直系血族又は同居の親族との間で行われた窃盗は、窃盗罪が成立しても、刑が免除されることになります。
したがって、無断で自分の持ち物を持ち出した夫には窃盗罪が成立することになりますが、刑は免除されることになります。
ちなみに、窃盗の罪は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です(刑法235条)。

上記の判例のケースでは、夫婦の婚姻関係が破綻していたこと、別居から約3年がたっていたことなども住居侵入罪の成立に影響があったのではないでしょうか。
別居からまだ日が浅く、荷物の搬出途中であるような場合は、住居侵入罪を問うことが難しいケースもあるかと思います。
いずれにしても、後で取りに行くのは難しくなるので、大事なものは持って行ったほうがよさそうです。

出典:ファイナンシャルフィールド https://financial-field.com/
2018年11月17日 配信記事

別居後は自己所有の家であっても注意が必要

当探偵社にも、すでに別居をしているが自宅に荷物を取りに行きたいと相談があります。このような相談には、犯罪や民事上のトラブルの可能性があるので注意するようにアドバイスしています。
相手が被害を主張する可能性は低いかもしれませんが、関係が険悪になっていれば通常では問題にならない行為でも被害を主張する可能性があります。
また、民事上の問題を指摘し損害賠償を求めたり、窃盗など事実とことなる刑事被害を主張する可能性もあります。

離婚時に起こるトラブルは、「相手に対する仕返し」と「不利な状況に追い込まれたくない」感情が主な原因です。
夫婦関係が良好なときには些細な問題で警察に通報する方は少ないですし、民事上の問題を指摘する可能性も低いです。しかし、離婚問題で泥沼化しているときには決して珍しくありません。
また、浮気をしている人は事実を必死に隠す傾向にあり、浮気を調べる行動を不快に感じます。その他にも、有利な立場に立とうと相手の粗探しをしてくる方が多い傾向にあります。
離婚時にはいつも以上に慎重な行動が必要であり、相手に突っ込まれる可能性がある行動を避けなければいけません。

記事の判決は別居から3年が経過しており、実質的に相手が居住している住宅と判断されたと考えられます。別居から時間が経過していない場合には判断が異なるかもしれませんが明確な基準はありません。
また、記事のケースでは浮気の証拠を目的に自宅に侵入しており、相手も不利な立場に立ちたくないと考え被害を訴えたとも考えられます。証拠撮影の詳細は不明ですが、衣服を着けていない可能性がある場所(寝室など)の撮影は迷惑防止条例に該当する可能性も考えられます。
その他にも、住宅内にカメラを仕掛けると、民事上のプライバシーの侵害と判断され慰謝料を請求される可能性もあります。

このような問題を避けるには、自宅にある荷物は別居前に持ち出すのが原則です。
別居後に荷物を取りに行くときには、相手の立ち合いがベストであり最低でも相手の同意を得ましょう。相手の同意があれば少なくても住居侵入に問われないと考えられるからです。
相手に浮気などの離婚原因があるときには、その証拠を手に入れたい気持ちも理解できますが個人での証拠収集にはリスクもあります。また、違法な方法で手に入れた証拠は裁判で認められない可能性がありますし、証拠の能力が低い証拠しか手に入れられない場合も多いでしょう。

離婚時に発生するさまざまな問題は、個人で解決をするのではなく弁護士や探偵の利用を検討してみましょう。
弁護士からは法律に基づいた的確なアドバイスがもらえますし、弁護士に交渉の代理をお願いすることもできます。弁護士が交渉を行うと、良い結果が得られたり不要なトラブルを避けられるメリットがあります。
また、浮気の証拠や浮気相手の特定は探偵の利用を検討してみましょう。探偵は調査や証拠収集のプロであり、個人では調べるのが難しい浮気相手の特定や浮気の証拠が手に入れられる可能性があります。また、探偵は法律に違反しない方法で調査を行っており、高い証拠能力がある証拠取集が可能で不要なトラブルも避けられます。
当事者はどうしても感情的になってしまい、リスクがある方法を取ってしまう傾向にあります。また、違法になる行為を完全には理解できておらず、気付かないうちに違法な行為を取ってしまう場合もあります。
その他にも、どのような証拠が裁判で有利になるかの知識がなく、十分な証拠能力がある証拠の入手は困難です。
探偵は過去の経験から裁判で有利になる証拠を理解しており、本当に役立つ証拠を手に入れられるメリットもがあります。

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