妊娠中に離婚する場合の注意点

妊娠中に離婚する様々な問題Divorce during pregnancy

離婚を決意したときには精神的な苦痛を伴うだけでなく、夫婦で多くの問題を解決していかなければなりません。
そのなかでも大きな問題の一つが、子どもに関する問題ではないでしょうか。
そして、一部では現在妊娠中の夫婦が離婚を選択するケースもあります。妊娠中の夫婦が離婚するときには、子どもが生まれてからの離婚するときとは一部で扱いが異なります。

子どもが居ない夫婦や子どもが成人して居る夫婦は、親権を決める必要がなくトラブルは少ないかもしれません。一方で、未成年の子どもが居る夫婦が離婚をする際には、夫婦間で親権の合意ができない場合があります。
また、子どもに関する問題は親権だけではありません。養育費や面会交流の取り決めが必要ですし、子どもの戸籍や苗字も考える必要があります。

妊娠中に離婚する場合には、お腹の子どもの父親が誰であるかが大きな問題です。
お腹の子どもの父親が、配偶者か浮気相手かで全く異なる問題が発生します。
現在妊娠中の夫婦が離婚するときの問題や注意点を説明します。また、妊娠している可能性がある方や離婚までに妊娠する可能性がある方も参考になる内容です。

妊娠中に離婚した場合の法律

妊娠中に離婚をしたときの子どもの親権や戸籍の取り扱いは、法律で決まっています。
そして、この法律はお腹の中の子どもが夫婦の子どもである前提なので、夫以外の男性との間にできた子どもだと不都合が発生します。
妊娠中に離婚をした場合の法律による親権や戸籍の扱われ方を紹介します。

妊娠中に離婚した場合の親権

妊娠中に離婚したときには、自動的に元妻が生まれてくる子どもの親権を得ます。
そのため、お互いに親権がほしい夫婦では、妻は出産までに離婚を成立させたいと考え、夫は離婚を出産後にしたいと考えます。
離婚は原則として夫婦双方の合意が必要なので、夫が離婚に同意しなければ裁判で離婚を成立させなければ離婚ができません。しかし、裁判で離婚を成立させるには法廷離婚事由が必要で、離婚が成立するまでに約6ヵ月の期間が必要です。
そのため、裁判で離婚を成立させようとしても、出産までに離婚が成立できないケースが多いです。
妻側は親権を得ようと不利な条件で離婚するケースがありますが、出産後に離婚をしても9割以上は妻側に親権を認めています。出産後に離婚をしても親権が取得できる可能性が高く、不利な条件を受け入れてまで離婚を急ぐ必要性がない場合もあります。
ただし、親権は性別だけで決まる訳ではありませんので、必ず妻が親権になれるとは限りません。裁判での親権の決定は、「子の福祉」の観点からさまざまな事情が考慮されて決定されます。父親が親権者としてふさわしいと判断されれば父親が親権を得ます。

妊娠中に離婚した場合の戸籍

離婚届の受理より300日を過ぎてから生まれた子どもは、「非嫡出子（ひちゃくしゅつし）」として母親の戸籍に入ります。
一方で、離婚届の受理より300日以内に生まれた子どもは、元夫の子どもとして扱われ子どもの戸籍は元夫の戸籍に入ります。
子どもの戸籍が元夫の戸籍に入るので、当然ですが子どもの苗字も元夫の苗字です。
離婚をすると結婚するときに苗字が変わった方（多くの場合元妻）は、原則として夫の戸籍から抜け結婚前の苗字に戻ります。そのため、出産した時点で子どもと母親の戸籍が異なり苗字も異なります。
戸籍と苗字の問題は、手続きを行えば子どもを自分の戸籍に入れ苗字の変更が可能です。

離婚後に生まれる子どもが浮気相手（旦那以外の男性）との間にできた子どものときにはさらに問題が複雑です。
離婚後300日以内に出産した子どもが、元夫以外の男性との間にできた子どもでも法律上は子どもは元夫の戸籍に入ります。つまり、元夫は自分の子どもではないのに戸籍上は親子関係が発生し、子どもの苗字も元夫の苗字になってしまいます。このままだと法律上は親子関係がるので、養育費や相続などの問題が発生する可能性があります。
事務んの子どもでなければ、元夫側は「摘出否認（ちゃくしゅつひにん）」の調停の申し立てができ戸籍から抜くことができます。しかし、元妻側からは摘出否認の申し立てができないので、元夫側の協力を得なければ「摘出否認」ができません。

元夫婦の関係が悪化している夫婦では、元夫側の協力が得られず簡単には解決できない場合があります。
摘出否認の調停では家庭裁判所でDNA鑑定を行い、親子関係がないと確定しなければ認められません。
嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知ったときから一年以内に提起しなければならなりません。期間を過ぎると嫡出否認の訴えはできなくなり、親子関係不存在確認の裁判を起こす必要が出てきます。
親子関係不存在確認の裁判では、子どもの「嫡出子」の地位が優先され親子関係が解消できるかわからなくなります。

妊娠中に離婚した場合の養育費

妊娠中に離婚をしたときでも元夫（または元妻）には養育費の支払い義務があります。
養育費は子どもが一緒に住んでいない親に対して、同等の生活を送るために要求ができる権利です。そのため、離婚時には生まれていなかった子どもでも、親子に違いないので養育費の支払い義務は当然発生します。
なお、離婚後に生まれた子どもの摘出否認を認めた場合は、親子関係がないので養育費の支払い義務はありません。

離婚原因により慰謝料の請求が可能

離婚原因が相手側にあれば、妊娠中に離婚したかには関わらず慰謝料の請求ができます。
慰謝料は損害賠償の一種であり「不法に侵害を与えられ損害を受けた者に対し、不法に侵害を与えた者が賠償として支払う金銭」です。
妊娠中に離婚に至っただけでは慰謝料は請求できませんが、相手が不法行為を伴う離婚の有責任者なら慰謝料が請求できます。

離婚原因を作った側に慰謝料の支払い義務があるので、夫側に不法行為があれば妻側は慰謝料の請求ができます。逆に妻側に不法行為があれば、夫側は妻に慰謝料の請求ができます。
子どもの父親が夫以外の男性の場合には、不貞行為があったと考えられ夫から妻への慰謝料請求ができる可能性が高いです。
つまり、夫に「摘出否認」の申し立てを行ってもらうと、妻は不貞行為に対する慰謝料を請求される可能性が高いです。

妊娠中に離婚した場合の面会交流

離婚する夫婦は関係が悪化しており、生まれてくる子どもと元夫を面会させたくないと考える方がいます。
しかし、元夫と子どもに親子関係があれば面会交流権があるので、元夫には子どもと面会する権利が保障されています。
妊娠中に離婚した場合でも元夫と離婚後に生まれた子どもの面会を正当な理由なく拒否できません。
また、調停などで面会交流を取り決める際には、親権者が正当な理由なく果たさないときに罰則を設定できます。具体的には、面会交流を果たさないときには1回に付き数万円の罰金の設定が一般的です。
面会交流権は、子の福祉（子どもの健やかな成長）のために認めている権利です。そのため、元夫との面会が子どものためにならない事実があれば、面会を制限できる場合があります。
面会交流の制限には、子どもの健やかな成長に悪影響を及ぼす事実が必要で、元夫婦関係の悪化や教育方針の違いでは認められません。

妊娠中に離婚して育児が可能かの問題

妊娠中に離婚をすると、所得や資産によっては経済的に苦しくなる人が居ます。
妊娠中に離婚をすると出産までと出産直後の収入がなくなる人は、最低でもその期間の生活費の確保が必要です。
現在も十分な所得がある仕事に就いており、産休や育休の制度が利用できる勤務先なら出産後も金銭的な問題は少ないです。
一方で、出産や育児に伴い仕事が続けられない場合。専業主婦やパート勤務など安定した収入がない場合には、経済的な問題を解決しなければいけません。

一般的に、男性よりも女性の賃金が低い傾向があり、子どもが居ると長時間の労働が難しい事情も考慮しましょう。また、退職後からキャリアが途切れていると、特殊なスキルや資格がないと再就職をしても十分な所得が得られない場合があります。
母子家庭の貧困率が高い現状があるのですが、子どもにとって好ましい環境ではありません。
出産後に仕事を始める場合には子どもの預け先の確保が必要です。実家が子どもの面倒を見られる環境ならよいですが、0歳児保育にはお金が掛かり対応している保育施設が少ないのが現状です。
正社員としての採用は、残業、休日出勤、宿泊を伴う出張を前提としている会社が多く、子どもがいる方の採用を敬遠する会社が多いです。また、保育所や保育園は決まった時間に迎えに行く必要がある施設がほとんどです。
残念ながら理解のある職場ばかりではなく、仕事を探す場合でも正社員としての就職が難しい場合が多いでしょう。
当面の生活費に問題がない金銭的に恵まれた方以外は、事前に子どもの預け先と勤務先の確保が必要です。

お腹の子が元旦那の子どもなら、元旦那に養育費の支払いを求めましょう。また、養育費未払いを避けるため公正証書を作成しておきましょう。
お腹の子が旦那以外の子どもなら、その方の経済力に頼るのも一つの方法です。戸籍上は親子関係になっていなくても父親に違いないので、養育に必要なお金を支払ってくれるかもしれません。
ただし、養育費は子どもの養育に必要な費用を、親権を持たない親が負担する意味を持つお金です。当然ですが親権者の生活に必要な費用ではないですし、元配偶者の所得が少ないと十分な養育費は受け取れなません。
養育費の金額は元夫婦の所得を中心に算出され、子ども一人に付き一カ月に2～10万円が一般的です。

妊娠中の離婚は、あなたと子どもにとって決して好ましくありません。
離婚にはさまざまな理由があると思いますが、子どもを妊娠するには大きな責任が伴います。夫婦でやっていけるのかをもう一度よく考えましょう。

夫からのDVや子どもへの虐待など、やむを得ない事情がある場合には妊娠中の離婚も選択肢の一つです。
しかし、離婚の前に旦那以外の男性との子どもの妊娠は避けるべきです。
離婚をした後に結婚や妊娠など新しい生活を築けば、子どもへの負担も大きく軽減できるのではないでしょうか？

早期に離婚を成立させる方法もある

旦那以外の男性の子どもを妊娠してからの離婚は、さまざまな問題が発生します。この問題を避ける方法の一つとして、早期に離婚を成立さえる方法が有効です。
すでに夫婦関係が破綻しており離婚を希望しているけれど、配偶者が離婚に応じない場合は検討してみましょう。
配偶者に「法廷離婚事由」があれば、配偶者が離婚に同意しなくても裁判で離婚が可能です。また、裁判で離婚が成立する事実があれば、裁判をしても結果が変わらないと考え協議離婚に応じる可能性があります。
名古屋調査室ai探偵事務所では、離婚が成立する条件を満たす調査を行っております。また、離婚が成立する条件を満たす事実があるのかの確認も行っています。